二位ガン 呟く|ω・*)

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割れた心、切れた思い

甘えが私を弱くした。

彼を傷つけるつもりなんてなかった。

なのになんで…何故あんなこと言っちゃったんだろう。

 

でも、全て受け止めてくれると信じていた。

 

だって彼はいつも私に全力だったから。

 

 

 

encounter

 

 雨の激しい6月、季節は梅雨真っ只中。

夫との暮らしに嫌気がさしていた、梅雨も私の気持ちに拍車をかけていたのかもしれない。

 

息子がいることが何よりの支え、でも何か足りない。

我が儘なんだろうか。

 

これは私が選んだ道、後悔はしていない、つもりだった。

そう、誰かと話したかった。きっとそうだ。

 

洗濯物を干し、夫のお弁当を作り、子供にご飯を食べさせ保育園に送った後。ふと携帯を開く。

私は何を求めているのだろう。

その時は深くなんて考えてなかった。

 

《出会ってみませんか》

その一文にいつもなら(怪しい)と思うのに、その時は全く思わなかった。

 

「私と話し相手になってくれませんか?」

 

登録するなり大量のメールが来た、怖くて携帯を閉じてしまう。

 

また同じ日々に戻る、別に夫が悪いわけじゃない。

義母の煩わしさも慣れてきていた、この生活に慣れた、筈だった。

 

でもそうじゃない。

 

何時からそうなった…? 息子を抱きしめる時、幸せを感じている。

そうだ彼を失ったからだ。

 

カナにはもう一人息子がいた。

だが、十歳という若さで小児ガンを患い、闘病した後、亡くなっていた。

 

自分も死にたかった。

長男が亡くなったことで義母にも随分罵られた。

「お前がタバコなんか吸っているからだ、もっと子供の事を考えていれば」

 

確かに止めれなかった。

今もストレスが溜まると吸わずにいられない。

 

彼がいなくなったこの場所で、『まだ一人いるじゃない』、なんて考えられない。

だって彼はたった一人。

この世界でたった一人の存在なの。

 

あなた達に何がわかるの?

 

そうだ、これが空虚な気持ちにさせるんだ。

こんな私を見てほしいんだ。

 

そして数日後、またあのサイトを開く。

相変わらずすごい量、でも返信は怖い。そう思っていた時に見つけた一言。

 

「良かったらメールでやり取りしてみませんか。嫌なら断ってくれていいです。」

 

他はガツガツしてる感じ、でもこの人だけ違う感じがする。

何か、引き寄せられるように返信してしまった。

 

(ついに返信してしまった。)

 

悪いことなどしていない、でも罪悪感が彼女を満たしていく。

同時に期待感が彼女を包む。

 

(何も返事が来ない…)

急にソワソワしてしまう。まだ返信して数分なのに。

 

そうこうしているうちに息子を迎えに行く時間。

そそくさと車へ駆け込み、また携帯を開く。(何も来てないな…)

私は何を急に期待し始めたんだろう。

 

家に帰り、夕飯の支度。今日は息子の好きなハンバーグにしよう。

義母は脂っこいなどと文句を言うが、息子が一番、他は二の次。

 

Expectations

 いつもの時間を乗り切り、やっと自分の時間が出来た。

普段なら息子と寝てしまうのに今夜は起きている。

 

何か胸に、なんだろう、私には分からない。

でも心拍が上がっているのは分かる。

 

携帯のランプが光っている。

ついに開いてみる。

 

彼?と思われる人からのメールが来ていた。

 

「メールありがとうございます!返事くれて嬉しいです。仕事で返信遅くなりすいません。」

 

何か誠実さを感じる。

でもわからない。カナの中で危険を感じさせる。

反面、彼とやり取りしてみたいと思う気持ちの方が強くなっていく。

 

「 お疲れ様です。仕事遅いんですね、体大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ!返事いただいて元気が出ました。」

 

 「早くご飯食べて、お風呂入ってください。」

 

「ありがとう、そうしますね!後で返信します。眠かったら寝てしまって構いませんからね。」

 

こんな言葉をかけられたことがない。

夫は義母に聞かなければ何もできない。義母は夫を溺愛していていわゆる“マザコン“だ。

ここに嫁ぎ、私は家政婦の様な扱いしか受けたことがない。

だから、今更夫に求められてもつい避けてしまう。

 

夫は何に対しても自分の満足しか考えていない。

だから子供にも“物を与える“事しかしない。私は物より愛情を注いでほしい。

 

 メールの通知が来た。

まだ一時間も経っていないのに 、もしかして私に返信するために急いだのだろうか。

自分の為に誰かが時間を割いてくれたことなんてどれくらいぶりだろうか。

 

 「すいません、急ぎすぎちゃいました」

 

何故か可愛いと思えてしまう。

 

「もっとゆっくり食べてよかったんですよ、私待てますから」

 

「なんか早く話したかったんですよ、最近張り合いがなかったんで今日あなたから返事がもらえて元気出てきたんです」

 

夫とは全く違うタイプ。

これが普通なのだろうか、そんなことはもう忘れていた。

 

このひと時に身を委ねている、ほんのりと暖かいきもちに。

 

 

 

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