二位ガン 呟く|ω・*)

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三番目の男16

 

 


 

 

 

喧嘩両成敗

 私の婆ちゃんは何かと揉め事の発端を作る。

 

以前書いた私が米泥棒扱いされた件だが、婆ちゃんも一枚噛んでいたらしい。

それというのも、二人とも罪の擦り付け合いをするからだ。

 

実際じいちゃんは米を黙って売っていたので罪は罪。

 

だが、理由は明白、婆ちゃんが小遣いを渡していなかったからだ。

あまりにも彼を締めすぎるので、甘党のじいちゃんはおやつを買うお金もなかったらしい。

 

 なのでしょっちゅうケンカになり、下手をすると暴力沙汰にまで発展する。

あれは何時だっただろうか、二人がバカにし合っていた時の事だ。

 

「この腐れバッコ!ぶったぎつけるぞ!」

「なすたえ!?腐れジッコ!警察呼ばねばねーわ」

 

 どちらも腐っているらしい。

 

考えてみればいつものお金の事で喧嘩していた。

ババチャは当時小学生の私に見せたくなかったそうで、いつも自分の部屋に連れていくのだが二人とも大声なので姿が見えずとも想像してしまうのだ。

 

 ちなみに『ぶったぎつける』は“殴る“という意味で、『なすたえ!?』は“なんだと!?“の意味になる、下越地方は特に乱暴な言葉遣いだと中越出身の元妻に言われたことがあるが、あちらの口の悪さは棚に上がっていたような気がする。

 

 よく知り合いのご夫婦では、喧嘩の後はすごく仲良くなるんだよね。などと聞くが、うちは何時までも根に持っているので面倒くさい。

 

特にねちっこいのは婆ちゃんだが、じいちゃんも変なところは記憶力が良く、いつまでも過去の事で相手をいじる。だから喧嘩が絶えない。

 

良くもまぁ、こんな男女を夫婦にしたものだ。とはいえ、彼らが結婚していなければ私は存在していない、昔はそんなことをよく考えた。

 

「あんだ根っ子ズヤ、特攻隊に行って死ねばいがったんだ」

もはや婆ちゃんの口癖になっていた。

 

「でもじいちゃん死んでたら俺生まれてないよ」

小学生の頃私がそういうと切なそうな顔で謝ってくるのだ。

 

「んだ~、じさま死んたったらタケシが生まれてこねがったんだな、勘弁のぉ」

そういい優しく抱きしめてくれる婆ちゃんは、私にとって温かいお母さんだった。

 

だからだろうか、いくらいじめに合おうとも引きこもったり、ひねくれたりしなかったのは。

 

 そんな婆ちゃんだが、じいちゃんに対しての差別が半端なく、当時村内にあった人気スーパーでたまに奮発し色々買ってくる。だが、じいちゃんに出さず私とババチャと三人で食べようとするのだ。

 

あれは気分が悪かった。

「ねえ、みんなで食べよでぇ、隠して食べるのやんたー」

と私が言うと

「あんだ、こんずらにっけジッコに食わせっとねやんさ」

(こんずらにっけ=子憎たらしい)

 

長年の憎しみが積もり積もってこうなったのか、とにかく差別を図りたがる。

どうやったらこんな関係になるのだろう?

 

ババチャ曰く

「あれは嫁に出せばいがった、苦労しねばわがんねやんだ」

親にまで呆れられていたのか。ほんと、痛いくらいよくわかる。

 

 


 

 

 

 

同族嫌悪

 私の実母は長女だった。

婆ちゃんと一応同じく一番目の女である。

 

 その母は家を出てから何度となく実家にたかりに来た。その度に喧嘩になり、数年は疎遠になった。しかし、あの頃の私は母が来ると嬉しくなりついつい浮足立ってしまう。

 

それを知ってか知らずか、特に言葉もかけられず妹弟を連れてさっさと帰るので、泣きながら車を見送ったのを今でも鮮明に覚えている。でも一番悲しかったのは妹弟と仲よく遊んでいたのにまた離れ離れになってしまうからだった。

 

そんな母を婆ちゃんは「ろくでなし」「自分勝手」と居なくなってから罵ることが多々あったが、「自分勝手」に関してはどちらも共通している。

 

2人とも顔以外はよく似ている親子だった。

居ないところで小さい子供に愚痴を言い、喧嘩も目を気にせずする。

愚痴の内容はその殆どがお互いの事だ。

 

いいところは何だろう、考えても中々出てこないところが残念だ。

 

祖母、母共に似ているからこそ合わないのだろう。

 

 こういった家庭は珍しくないとは思うが、出ていくまでは中々ないと思う。

殆どが我慢して耐え、面倒を見、そして看取り、悔いの無い様にするのだと思うが、それが出来ないのが二人の共通点なのだ。

 

 婆ちゃんは私が大きくなり、反抗するようになると「はぁー、やっぱあの親の子だ」と私を馬鹿にするような口調で言うもんだったが、母も私ともめた時「「なんなんだろこの子?誰に似たんだか」と産んだことも忘れてしまったかのように他人扱いされたことが多々ある。

 

そして私は祖母に「その親産んだの自分だろ」と言い、母には「もうボケたんだか?自分産んだのも忘れたんでわな~」と返す。

ぐうの音も出ないからすごい剣幕で睨みつけてきたものだが、そこも似ていた。

 

 ババチャはあんなに穏やかで優しくて面倒見のいい人なのに誰に似たのだろう。

話によるとババチャの連れ合いの父親(私の高曾祖父にあたる)は寝ているか、酒を飲んでいるかみたいな生活を毎日していた。と聞いたことがあったので隔世遺伝かもしれない。

 

とはいえだ。

自制心の無さは単に大人気ないだけだろう。

母は見た目は綺麗だったが、流石にあんな面倒臭い人では一緒に居たくはない。

実父にも是非聞いてみたいものだ。

 

私たち兄弟が親になり、母たちが弟夫婦と同居生活になってからというもの良く愚痴を言いに来た。婆ちゃんと同じなのだ。

 

あまりに同じで聞きながら笑ってしまったことを覚えている。

「母ちゃんおめ、婆ちゃんとおんなじこといってんぞ!」

「なんだえ!?ばさまと一緒にしんのでくれ!」

 

「おめは嫁にでたことねーろ!嫁さんは他人の家に来てくれたんだぜ、我慢し通しなんだから大目に見てやんねーと頭おかしくなるぞ?」

これを言ってからしばらく優しかったらしい。

 

しかし弟のお嫁さんはその後、うつ病を発症してしまうのだった。

 

 

続く

 

 

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