二位ガン 呟く|ω・*)

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割れた心、切れた思いⅥ

今更私に何を求めるの。

 

貴方には合っても、私が望むものは何もない…

 

多分、きっと。

 

前に進むという事は何をもって示すのか。

私の人生をあなたに測ってほしくはない、大きな憎しみに飲み込まれそうになっていく

 

深い…深いところに

 

 

reunion

 午後三時を回った頃だ、カナは一人で事務処理を行っていた。

 

突然事務所のドアが開く。

ガラガラ…

「ここにいたか…」

 「なんで来たの!?良くこれたね」

 

夫の和明だ、あの人一倍マザコンで内気な男が、しかも一人で来るとはカナですら予想がつかなかった。

 

「ママさ、いや、ちょっと話が合って来たんだよ」

「私はあなたのママじゃない」

 

また減滅するような言葉を吐く。

 

「お母さんに言われてきたんでしょ?お父さんに殴られるよ?!、私もう帰るつもりないから」

「そうじゃないんだ、いいから話聞けよ」!」

 

和明は近づき、カナの腕を押さえつけようとしてきた。

 

「!? またあの時みたい力づくで来るの?!そういうところが嫌いなんだよ!」

 

 ついに言ってしまった。

今まで我慢して言わないでいた事を、これを言ってしまったら自分の中で抑えが利かなくなる、そんな自分をあの家族は絶対に許さない。

 

精神が崩壊するまで責めたてるだろう。

 

「話を聞いてくれればいいんだよ!何もしないから!」

「分かったから手、放して」

 

正直二人で居たくなかった、だが誰か呼ぼうにも母も取引先回りしているので夜まで帰ってこない。

 

「で、なんなの?」

「あぁ、実はさ、家を出て三人で暮らさないかと思って言いに来たんだ」

 

「えっ!?噓でしょ、お義母さんに言われたの?」

「あぁ、いや、、俺が自分で考えたんだ」

 

 嘘だと一発で分かった。

和明の挙動から見るに、「自分から行動した」と思わせるように義母が仕組んだのだろう。

 

「私、あなたといるのは無理だと思う、もう気持ちとかないんだよ。成哉が心配なだけ、返して欲しい」

「俺だってあんな親と一緒にいる気ないさ、成哉とお前と三人で居たかったんだ」

 

「それ、何処まで本気か分からないけど、三人で暮らすなら今までみたいに帰ってゲームばっかりしないで子供の世話とか家事手伝ってくれるの?」

 「するに決まってるだろ、今まではお母さんが居たから出来なかったんだよ」

 

 そういうと和明は明らかに動揺していた。

カナに自分の考えなどバレるはずもない、今までも家庭で従順な妻だと思っていたカナが今は自分に反抗している。

 

「反抗」と取っていた時点で見下していたのだろう。

 

「あのね、言わせてもらうけど私の事、妻なんて思ったことないでしょ?自分がしたいときに無理やりだったり、お義母さんから酷い事言われても庇ってくれた箏もないし、ご飯早くしろくらいしか言わないでしょ、それって奴隷じゃない!」

 

(こいつ、付き合っている時ですらこんな反抗しなかったのに)

 

和明の中で沸々と怒りがこみあげていた。

 

Parting

 

「いいから黙っていう事を聞け!」

「やっぱり反省してないんじゃない!いや、絶対いや!!」

 

「なんだと!このっ!」

 

和明が手を上げようとしたその時、誰かがドアを開け走り寄ってきた。

 

《ガツッ》

 

誰かが和明を殴り飛ばした。

 

「だれ!? あっ、ヒデさん」

 

従業員のヒデだった。

 

「テメエ、何処で何してんのか分かってのかよ!?カナさん大丈夫か?押さえとくから警察呼んでくれ!」

「ヒデさん、違うの、これ一応…夫なの」

「えっ!?」

 

流石に面食らったヒデはバツが悪そうに和明に目をやる。

 

「うぅ、何でも暴力で解決しようとしやがって」

「あなたが私に暴力振おうとしたからでしょ、なに自分の事棚に上げてるの?」

 

「ヒデさんは怪我してない?この人もう帰るから、もういいよね、成哉は私が面倒見るから返してください」

 

 そういうと和明は何故か笑みを浮かべた。

 

「ふん、いい気なもんだな。成哉はお前が全然帰ってこないから嫌いだとさ、ママはきっと僕を捨てたんだ、嫌いになったから家を出て行ったんだってな。俺が違うよって庇ってやってたんだけど、もういいさ、好きにすればいい」

 

 カナはこの家族の成哉に対する洗脳が始まっていたと気づいた。

 

「成哉はいつも私の事心配してくれていたのに、誰かに言われなきゃそんな事言わないでしょ返してよ!」

 

詰めよるカナに対し待ってましたとばかりに和明は余裕を見せる。

 

「裁判とかしたって僕が面倒見ることは出来るからな、いくら親権があったって、お前は家の手伝いで給料もらっているわけでもないし、家計を支えれて家に子供の面倒を見る人が居なきゃ意味ないだろ」

 

(なんでこんなクズと結婚したんだろう)

「いいよ、私それなら何処でも働くし、あなたに負けずに稼げればいいんでしょ」

「そんな事出来るわけないだろ」

 

「出来るよ多分、あなたの稼ぎ知らないとでも思ってるの?本当ならお小遣いなんか渡せないんだよ?あなたのママが援助してるからでしょ、私だって専業で居ろ!なんて言われなきゃ仕事したかったの」

 

 カナも独身の時は家業ではなく工場で車部品を作る仕事をしていた。

集中していることが好きなので独り身の時は和明に近いくらいは稼いでいた、というより和明が働かなすぎだったのだ。

 

 良く休むし、仮病なのか休んだ日にゲームに没頭している。

あまり当てにされていないのだろう。

 

「何とでも言えばいいさ、でも子供は渡さない、三人で暮らすことは言ったからなちゃんと考えとけよ!」

 

ヒデはあまりの横暴さに腹が立ったようだった。

 

「あんたクズだな、我慢の限界だわ」

 

《ボクッ!》

和明の腹に力いっぱい拳を放り込む。

 

「ヒデさん!止めて!暴力振う人いやっ」

「すいません、どうしても我慢が出来なくて」

 

「私の代わりにしてくれたんでしょ?でもあの人と同じになっちゃうからやめて、ね?」

「はい、カナさん一つ聞いてもいいですか」

 

「なに?」

「あいつ、いや、旦那さんとは別れないんですか」

 

「別れたいよ、でもあんな感じだから難しいの、子供もいるし…」

「俺が、取り返せるよう何か考えます。仲間もいるんで」

 

「ヒデさん、絶対やめて、お父さんがいま弁護士さんと相談しているって言ってたから」

「分かりました、社長の顔潰すような事はしません、でも何かあったら言ってください、カナさんは一人じゃないんすよ」

 

(なんでヒデさんはこんなに優しいんだろう)

ヒデはカナより10歳上で43歳独身、父の会社で今は現場監督だが、将来は次期専務候補として父に目をかけられていた。

 

「ありがとう、今日の事は私から言うから黙ってて、ね」

「その方がいいです、自分から家族と話して決めるべきです、ただ…」

 

「ん?…ただ?」

「ただ、俺は早く別れて、幸せになって欲しいんです!」

 

 カナは知る由もなかった、ずっとヒデが秘めてきた思いなど。

そして抱え込んでしまったことが更なる問題を抱えていくなどと誰がそうぞうしただろう。

 

 

 

 

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