二位ガン 呟く|ω・*)

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三番目の男14-②

 

あけましたが…

 真冬の、しかも師走に、あのような体験をしてからというもの、我が家は早朝から緊張感が漂うようになった。

 

何故かと言えば、じいちゃんが異常に元気だからだ。

 

 大抵は80代後半から徐々に歩くのが困難になり、そこから面倒になると座ってばかりで寝たきりになる人が多い。

 

これを読んでいて気を悪くした方がいたらお許し願いたい。私の近所では多かったのだ。

 

だがじいちゃんは違う。

 

「なにくそ精神」とかではなく「目標は必ず達成させる」のが彼だ。

その方向性が間違っていようとも。

 

いくら物欲の強い私でもここまでは出来ない。

 

多分じいちゃんがギャンブルに手を出していたら、我が家は崩壊の一途だったであろう。ここだけは褒める所だ。

 

 あれはXデーの翌々日、1月1日の事。

本当であればゆっくり寝ていたいところであったが、妻は朝から物音を聞きつけ起きていた。

 

『ガタガタ、ズッズッ~、ズッズッ~』

 

「んっ!?」

 

早朝4:30だったそうだ、私は寝ていた。

でも妻は不審に思い、すぐさま茶の間へ向かって行った。

 

「じいちゃん!どしたーん?こんなにはよ起きて??」

 

かなり大きい声だったので目が覚めた。

正直起きてないふりをしようとした、が、何かあったらと思い私もすぐさま茶の間へ向かう。

 

妻が大きな声が聞こえた。

 

「あ~!!?なんだぁ~ん!」

(えっ!?なに!!?)

 

 私は大声を聞きつけ茶の間へ向かう。

急いで戸を開けると、鼻をぶん殴られたような異臭が私を襲った。

 

「うえっ!、おっっほー!」

「ちょっと悪いんだけどこれ抑えててくんない?」

 

 それはじいちゃんのオムツの片側、人でありながら、尻から尻尾を生やしている。

そして彼はなすがまま、歩行器に捕まり棒立ちしている。

 

「タケシ~、座ってもいいがのぉ~」

 

それはダメだろう…

 

「今座ったらウンコつくから待ってくれー!」

 

出ているのが分からないのか、どうなってもいいから座りたいのか?

大志抱いたような表情で、ムカつくほど堂々としている。

 

「あーありがと、ちょっと拭くわ」

 

妻はそういうとゴム手袋をはめてきてじいちゃんのお尻を拭き始めた。

本当に感謝しかない。

 

 彼女が言うセリフと行動は本来私が言うべきことで、やるべきことだ。

でも彼女はそんな事は言わない。だから自分でもやろうという気になるのだ。

 

そうこうしているうちに尻尾は無くなった。

 

「じいちゃーん!?おめ、ウンコ出てるの分からねーんだかー?」

「そんなんわかるさ~!」

 

「分からんだばなんでトイレ行かねーの?!」

「そんだに出てねーと思ったんだがの~」

 

大盛りですよ。

 

「出てるの分からねーから茶の間に来たんだろ!?分かるんならなんでトイレに行かねやん??」

 

こういう時の彼女は怖い、というかびっくりするくらい声が大きい。

 

「わがるさー!ホッホー」

 

埋めてやろうかと思った。

 

こんなやり取りから年明けが始まった。

 

 

妻の粘り

 私は妻に対してたまに思う事がある。

 

(なんでこんなに頑張るんだろう、休みづらい…)

 

でも考えてみれば、《やらなければならないからやっている》だけであって、私がグウタラなだけなのだ。

 

 私は漫画や、アニメが大好きだ。

今も何かしら新しいのが出るとみている。邦画や洋画も見る、だが子供が生まれ、じいちゃんがこのようなことになってくると流石に好き勝手もしていられなくなってきた。

 

危機感、である。

少し私の話をすると、前妻との生活の中で日々《キレられる》日常で過ごしたせいか、一緒にいる人の顔色を異常に窺うようになった。

 

 人見知りが激しく、内弁慶だった彼女はどこに行くにも私を介し話させた。

そのおかげで先輩に殴られたこともある。

 

「お前が悪い!ハッキリ言ってやれ」と言われたものの、家に帰るとグチグチとはじまるので、分かるまで言っても次の日には元に戻っている。

 

朝、二人とも機嫌よく仕事に行っても、いざ帰ってみるとタバコを加え、どこか一点を見つめ、目を合わせないようにしている姿を見るたびに《ゾクっ》としたものだ。

 

 

 前妻と結婚する前日、今後一緒に暮らしていくうえで大事なことを、納得してもらおうと話したところ「なんで私が言われなきゃいけないの?あなたが私を支えなきゃいけないんだよ?!」と衝撃的な言葉を伝えられた。

 

この言葉に殺意が湧いた。

 

 今思えば、あの時にやめておくべきだった。今となっては糧になったと思っておこう。

入籍前日、朝の4時まで粘り、彼女が納得するまで話した。結果最後は離婚に至ったわけだが…

 

 こんなことが続いたので「怒ってる?」と聞くことが多くなった。

今の妻にも同じことを聞いたことがあった。なんの時だったろう。

 

「なんか怒ってる?」

「なんでそんなこと聞くの?気にしなくていいんだよ?全部話して」

 

それで全てを話した後、妻は涙を流してくれた。

 

「辛かったね、でもそんなこと言わないから。あと隠してることない?」

 

流石に「Hな本を隠しています」とか馬鹿なことを言えって訳では無いよな。と思いつつ持病の話などをし、安心して結婚できた。

 

とはいえ、未だトラウマが多少残っているらしく、(ほったらかしにしてると危険な気が)と思ってしまい、いい意味で妻の負担を減らそうという考えは出てきた。

 

                             

 

 話は戻り、妻はじいちゃんのだらしなさに拍車がかからない様、粘り強く「トイレで用を足す」様に何度も何度も伝え続けた。

 

しまいに部屋にポータブルトイレを置き、捕まるところまでつけてもらったのだが、そうしたところトイレに行くようになった。

 

 面白いものだ、どういった効果何だろう、新しい発見なのか?

 

だが、朝は違う、冒頭で『ガタガタ、ズッズッ~、ズッズッ~』という音を朝聞いたと書いたが、あれは歩行器のストッパーが止まった拍子に擦れる音だった。

じいちゃんがコーナリングをするときにガタガタとなり、進むときにズッズッーと音が鳴っていたのだ。

 

結構大きめな音だった。

 

 年が明け、冬休みも終わり雪が結構深いころになると私は4:30か5:00には起きて雪かきを始める。

 

だがこの年は違った。

 

『ピピ ピピ』

スマホのタイマーが鳴り、即座に窓を見る。

 

(あ~積もってんな)

 

『ガタガタガタ、ズッズッ~、ズッズッ~』このサインとともに妻か私がじいちゃんの所へ行き、オムツのチェックをする。

 

「もうちょっと寝てれっちゃ~!」

 

私がこういうと。

 

「おら、腹空いたんがのぉ~」

何処まで元気なのか。。。

 

朝から大盛りのご飯をペロッと平らげる。

っとその前に先ずはオムツだ、慎重にしないと尻尾が生えているか、すでに手遅れかもしれない。

 

していなければその日の運は最高潮だろう。

 

しかし手遅れだった。

 

『もわぁ~』と私を匂いが襲ってくる。

 

「あーくせっ、腹の中腐ってんじゃねーか!?」

「はよしてくれ~、腹空いたんだー」

 

耳が遠いから何を言ってもほぼ伝わっていない。

前に訪問リハビリの女性職員の方が来た時、じいちゃんの耳元で聞こえるように話していた時があった。

 

綺麗な人で、うらやま… もとい、世話を焼かしたと思う。

 

とにかく、真冬なので戸を全開にして臭いにおいを軽減することも出来ず、臭いチョコレートだと思いながら拭き上げる。

 

そうこうしていいるうちに6時を回っていた。

 

「ほらいいぞ!おれ雪かきしてくるからなっ!」

 

返事無しかい。

 

このことから、妻は早く起きるようになりました。

 

三番目の男14-③へ続く

 

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