二位ガン 呟く|ω・*)

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うんめーね〜

  大判焼き

 

  「タケシ!あんたまだ学校の支度してないのかい!」

 

寝起きが悪い孫のタケシに祖母のサトは朝から鬼の形相でけしかける。 

 

「わーかったよ、まだご飯食べてんだもん」

 

  その言葉を聞いて、サトは洗濯物を干すのをやめ即座に茶の間に向かう。

 

「嘘つくな!ご飯はたべてねーし、ランドセルもそのままだろぅ!」

 

「おおぅ!?」

 

毎日言われると分かっていても、学習しないものだから同じ小言を言われてしまう。

 

先生に叱られても婆ちゃん知らないよ!

 

(うるせーな〜)

 

「何か言ったかい!?」

「なんでもないです!!!」

 

  タケシはいつもサトの感の良さにビクッとする。

婆ちゃん妖怪か…?

 

タケシは婆ちゃんが大好きだ。

でも朝の婆ちゃんだけは凄く苦手だ。

 

(余所のお母さんはどうなんだろう?まーいいや)

などとボケ〜っと考え事をしていると。

 

「グズグズしてないで早くしな!怒るよ!」

 

「はい!」

え〜、もう怒ってるじゃないか…タケシは不貞腐れながら家を出る。

 

「行ってきまーす」

「気をつけるんだよ!」

 

婆ちゃんは必ず家を出る時見送ってくれる。

 

  いつもより今朝は特に怒ってたような気がする。

昨日じいちゃんとケンカしてたからだろうか。

 

帰るのやだな〜。

 

  ふと気付いた。今日は市の日!

毎月一日と十五日になると駅前に様々な「出店」が来て市場が出来る。服屋、八百屋、魚屋、お菓子屋。

 

その中に大判焼き屋も来ており、祖母はいつも買い出しに行くと、お土産に大判焼きを買ってくるのだ。

 

  前に一緒に買い出しに行った時、タケシは大判焼きを焼くおじさんの姿をじっと見ていた。

手際よく型の中に材料を流し込み、ふんわりと甘い匂いが漂ってくる。

少しするとアンコを入れ、型を閉じてひっくり返しながら焼いていく。

 

  あれが大好きなのだ。

いくら婆ちゃんが怒っていても大判焼きの魅力には叶わない。

 

「ただいまー!」

 

婆ちゃんは畑を耕していた。

 

「今日は何かいい事あったかい?」

「何にもいい事なかったー!」

「そんなに毎日いい事なんてないよ!さぁ、早く家に上がりな、タケシが好きなのあるよ!」

 

  それだけで何か分かっていた。

家に上がり手を洗い、うがいをする。

婆ちゃんは必ずそれをしないと怒る。だからタケシは手洗いうがいは必ずする様癖になっていた。

 

茶の間に行くと茶色の紙袋に大判焼きが入っていた。

 

「うんめぇ〜!」そう言いながら牛乳をのんだり、お茶を飲みながら食べたり、自分なりの美味しい食べ方を模索するのだ。

 

婆ちゃんが夕飯の支度に帰ってくる。

 

「少しは残しときなよ、爺さん酒飲みのくせに甘党なんだから」

「はーい!」

 

僕はここの子供で良かったなと思った。

 

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